「家族芝居」 韓国新人作家シリーズ第6弾

2012年に始まったシリーズの第6弾。

緊急事態宣言が延長され、その枠内に入ってしまった5月29日、

北区北とぴあペガサスホールでの公演。

石鍋多加史の舞台を楽しむことが第1の目的だったが、

2時間の公演の何もかもを存分に楽しむことになった。

開幕前、昨年来のコロナ禍で1年越しの開幕であること、

一部オンライン公演に変更していることが語られた。

舞台を作る情熱と苦労をここでも目の当たりにし、関係者全員へ心からのエールを送った。

もう一つ、開演前のお話で心に沁みた2つのこと。

 

韓国では毎年17の新聞社が「新春文芸」と冠し、新作を募集

元旦に小説、詩歌、児童文学、戯曲の大賞が各社が発表する。

戯曲は受賞作品が同年の秋に著名な演出家の演出で上演され、

劇作家への登竜門として人気が高く、毎年2千を超える応募がある。

 

若手登竜門であるこの賞の戯曲部門受賞作をいち早く日本に紹介する

単に作品を提供することに止めず、日韓のスタッフが協力して舞台を作る。

国と国の関係が難しい時でも芸術作品を一緒に作る仲間として理解し合う場で

あることを意識している。

 

  • 暮らしの中にある芸術、才能をすくい上げる活動
  • 芸術と人間の愉快な関係

が心に沁みた。

 

「家族芝居」

「分かり合いたい、柔らかい気持ちを共有したい、と思う家族。

思えば思うほど、努力すればするほどすれ違いの溝が開いてしまう。」

わかるなあ。心が痛くなった。

父親、病の床に臥せる母親、娘、三人の会話劇。

石鍋多加史さん、立ち姿、呼吸、指の動き、足の位置でも語りかける。

吉田知恵さん、竹内真菜さんの意志ある目が苦悩を描く。

舞台と同じ空気を直に感じる小劇場ならではの緊張感を久しぶりに楽しんだ。

 

「たいまつ」

「月明りに照らされる戦場。死体から金歯や銀歯を抜き取る歯科医師と

手伝う少年。たいまつをつけたい少年、敵に見つかるから許さない歯科医」

悲劇の中に喜劇がある。鈴木みらのさん、渡部彩萌さん、伊澤玲さん、

かとうしんごさん、谷川清夏さん5名の出演者の身体能力の高さにびっくり。

演劇人として、みなさん明確にご自身の目指すところを握っているな、と

思えるメリハリのある所作が素敵だった。

戦争の描き方は様々だけど、「たいまつ」に共感した。