あんず
真夏の一宮町(山梨県)、小学校グラウンド、
男の子たちが遊んでいた。
ふらふらと近づいたら男の子に抱き上げられた。
男の子のお母さんが猫の保護活動をしていたのはラッキーだった。
人間時間で1週間後、私はここに来た。
名前は猫の宅急便のジジになるはずだったらしいが、
お母さんが一宮から来たから「あんず」の一声で
変更されてしまった。
何事も運命のままに💖
ある時、陽差しの中で目が覚めたら
エリマキトカゲになっていたわたし。
夢があるかって?
今まで夢なんて考えたこともなかった。
今、始めて夢を見つけた!輪っかを取る!
でもどうやったら取れるのかなあ。
ああ、これも運命のままに💖
口の横に良性の腫瘍ができて、入院手術して、
びっくりしながらも、内省していたわたし。
同居の人間たちは「あんずはのん気もので幸せだ」
と言っていたけど、わたしだっていろいろ思っているのだ。
私はあるがままを受け入れる才能があると知った。
来客があると1日中でも引き籠っていることができた。
お爺ちゃんとお祖母ちゃんが来たときは違った。
お祖母ちゃんのブラッシングが好きだった。
マグロの赤身と干物の品質を見分けることがなぜかできた。
サンチョ先輩ともも先輩は魚というものに
興味がなかった。
猫としてどうかと思ったけど、言わなかった。
あるがままにだからね。
慢性腎不全になった。
従順が売りのわたしだけど、
ある時から薬を飲んだふりして吐き出す遊びを始めた。
でも、成功したのはほんの何回かだけだった。
大体、お母さんの目の前で吐き出すから。
なぜかこんなことができる、と自慢したくなってしまうから。
皮下注射が始まった時、何だこれ?って思った。
先生はこんなに静かににしていられるなんて
とてもいい子だ、って褒めてくれた。
家でやるようになっても、一度も嫌!なんて言わなかった。
運命のままに💖
お別れの朝、初めて運命に逆らった。
一生懸命息をして頑張った。
お母さんがこれ以上頑張らなくてもいいよ、と
優しく言ってくれたけど、頑張った。
最後の息をした時、おかあさんが
「よく頑張りました。いい子でした💖」
と言って抱きしめてくれた。
わたしは嬉しかった。
運命のままって素敵だ💖