人間と暮らせば 猫の独白その6

あんず

 

真夏の一宮町(山梨県)、小学校グラウンド、

男の子たちが遊んでいた。

ふらふらと近づいたら男の子に抱き上げられた。

男の子のお母さんが猫の保護活動をしていたのはラッキーだった。

人間時間で1週間後、私はここに来た。

名前は猫の宅急便のジジになるはずだったらしいが、

お母さんが一宮から来たから「あんず」の一声で

変更されてしまった。

何事も運命のままに💖

 

ある時、陽差しの中で目が覚めたら

エリマキトカゲになっていたわたし。

夢があるかって?

今まで夢なんて考えたこともなかった。

今、始めて夢を見つけた!輪っかを取る!

でもどうやったら取れるのかなあ。

ああ、これも運命のままに💖

 

口の横に良性の腫瘍ができて、入院手術して、

びっくりしながらも、内省していたわたし。

同居の人間たちは「あんずはのん気もので幸せだ」

と言っていたけど、わたしだっていろいろ思っているのだ。

私はあるがままを受け入れる才能があると知った。

 

来客があると1日中でも引き籠っていることができた。

お爺ちゃんとお祖母ちゃんが来たときは違った。

お祖母ちゃんのブラッシングが好きだった。

 

マグロの赤身と干物の品質を見分けることがなぜかできた。

サンチョ先輩ともも先輩は魚というものに

興味がなかった。

猫としてどうかと思ったけど、言わなかった。

あるがままにだからね。

 

慢性腎不全になった。

従順が売りのわたしだけど、

ある時から薬を飲んだふりして吐き出す遊びを始めた。

でも、成功したのはほんの何回かだけだった。

大体、お母さんの目の前で吐き出すから。

なぜかこんなことができる、と自慢したくなってしまうから。

皮下注射が始まった時、何だこれ?って思った。

先生はこんなに静かににしていられるなんて

とてもいい子だ、って褒めてくれた。

家でやるようになっても、一度も嫌!なんて言わなかった。

運命のままに💖

 

お別れの朝、初めて運命に逆らった。

一生懸命息をして頑張った。

お母さんがこれ以上頑張らなくてもいいよ、と

優しく言ってくれたけど、頑張った。

最後の息をした時、おかあさんが

「よく頑張りました。いい子でした💖」

と言って抱きしめてくれた。

わたしは嬉しかった。

運命のままって素敵だ💖

 

 

 

 

 

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