ドルシネア・デル・トボソ
ドルシネア・デル・トボソ。。。
訳の分からないスゴイ名前を付けられた。
いつもドロシーって呼ばれていたから
お母さん以外は私の正式の名前を誰も知らない。
なんでもスペインを代表する作家ミゲル・デ・セルバンテスの代表作
『ドン・キホーテ」の主人公ドン・キホーテの
思い姫の名前なんだとか。
サンチョと私は一心同体。
どんな時も離れなかった。
夜も並んでお母さんの腕枕で寝た。
いつもサンチョにお母さん側を取られていたけど、
私は一回も文句を言ったことはない。
サンチョは愛嬌ある我儘者。
私は思慮深い女子。
思慮深い私は、傍若無人な態度で私をかまうお父さんが
ちょっと苦手だった。
たまにしか帰ってこないからまあ許せた。
ある時、どうしてもお父さんを元気づけたい!と思う時があった。
そこで、お父さんがソファーに座った時、いつもは逃げていたけど、
すっと横に座ったの。
お父さん元気になった。
それからはフレンドリーな関係になった。
いばりんぼうサンチョが虹の橋を渡ってしまったら
なぜか私がいばりんぼうになった。
ジャンヌ(チンチラミックス)はただの同居人、、、
と思っていた。
私が20歳の時、そのジャンヌが18歳で亡くなった。
そしたら心にぽっかり穴が開いて、
体調不良に陥ってしまった。
ジャンヌが大事な家族だって初めて気がついた。
動物病院の先生が
「相性にもよるけど、仲間ができると元気になるかもしれない」
と言って、動物病院に保護されていた
サンチョと同じキジトラ猫をお母さんに預けた。
偽物サンチョが我が家にやってきた。
私の喪失感に包まれた静かな暮らしは一転した。
威張って、怒る暮らしになった。
お父さん以上に傍若無人な偽物サンチョは全くめげない。
年のせいか威張り疲れて、気がついた。
私、元気だ❣
偽物サンチョは勝手気ままな奴だけど、
同居猫がいるってこんなに素敵なこととは知らなかった。
心の中では「ありがとう」といつも言っていた。
偽物サンチョがやってきてちょうど1年。
私は21歳で本当のサンチョのところに行くことにした。
ももちゃんがいるから奴は寂しくはないだろう。
一度でいいからドルシネア・デル・トボソって呼んでほしかった。
へんてこな名前だけどね。
家族の話題に出た時でいいから呼んで欲しい。