オペラ魔笛

代々木上原にあるムジカーザでのコンサート形式の魔笛は限られた空間を逆手にとって魅力ある演出がそこここに感じられ、観客も舞台の一員かと思える公演でした。

以前、新国立劇場の裏側を見学する機会がありました。そこで裏方さんの仕事のこと、舞台装置のこと、大道具の搬出搬入、保管などなど、オペラ公演を支える様々な仕組み、人間の働きについても話を聞きました。高いチケット代の内訳の一端を改めて確認し、仕方ないと思う気持ち、そうは言っても、その値段では気軽には足を運べないなと下を向いてしまう気持ちが相半ばしました。

比較的足を運びやすいのはコンサート形式オペラです。大がかりな装置はなく、オーケストラボックスもありませんが、今回の魔笛でも企画者、出演者が叡知を出し合って作り上げた舞台を堪能しました。

%e9%ad%94%e7%ac%9b%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%82%b1%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%a9オーケストラ担当はバイオリン、チェロ、フルート、キーボードでした。着席した時、えっキーボード?と思ってしまいました。しかし、このキーボードが変幻自在な音色を奏でることで、小さな陣容でも豊かな音楽となることを知りました。

合唱は1階、2階席後ろで行われ、そのハーモニーの美しさ、直に身体に伝わってくる声の振動に魅了され、鳥肌が立ちました。狭いスペースだからこその味わいでした。

夜の女王役、大武彩子さんは国立音大大学院時代と英王立音楽院に留学中に一時帰国された際の2回、夢空間La Musicaコンサートに出演していただいておりますが、修士課程を修了された今回、一回りも二回りも大きくなられた姿を目の当たりにしました。華奢な大武さんとは思えない奥行きのあるコロラトゥーラソプラノで夜の女王の渦巻く怨念と我が子への深い愛を大いに聴かせてくれました。役者としての凄みにも見入りました。

出演者17名が顔を揃えるといっぱいになるメインの舞台の床はこの出演者自らが作ったこと、ザラストロの王冠はその床材の切れ端で作ったこと、日本語訳字幕も出演者の一人が作成したことが紹介されました。%e9%ad%94%e7%ac%9b%e5%87%ba%e6%bc%94%e8%80%85

コンサート形式とはいえ、舞台を完成させるために払われる努力に変わりはなく、披露される演奏はやはり素晴らしいものです。