ジャンヌ
この家では洋猫は後にも(多分)先にも私だけ。
チンチラミックス。
お母さんはチンチラとは比べ物にならないくらい可愛いって言っていた。
こういうのを親ばかと言うらしい。
サンチョとドロシーと同じ熱帯魚屋さんから少し遅れてこの家に来た。
家族は気品ある私の姿はフランス猫、と思ったらしい。
フランス猫って何のことやら。
そこで、フランスを救い、シャルル7世の戴冠に貢献した
ジャンヌ・ダルクのジャンヌが私の名前となった。
私はいつも一人で自由気ままに過ごした。
物事に一喜一憂するなんてことはもってのほか。
喜怒哀楽は外に出さない。
声も滅多なことでは出さない。
人間が呼んでも気が向かなければ応えない。
「ジャンヌには気品がある」と家族は言った。
私はただ私の心のままに過ごしていただけ。
ただし、Mちゃんの言うことは何でも聞いた。
Mちゃんの声は天の啓示のような気がした。
私の魂が旅立った時、家族は
「ジャンヌは美しいぬいぐるみになった」
と言い合っていた。
最後のお別れと称して、私を抱いて記念写真を撮っていた。
変わった見送り方をされた。
みんなの腕の中は暖かくて、優しさいっぱいとわかった。