夢空間LaMusicaコンサート第44回
日時:2019年6月8日(土)14:00開演/16:30終演
場所:日本キリスト教団ロゴス教会
出演:華岡将生(Fl)遠藤征志(Pf)
1年に1度必ず存在する6月8日という日付け、1週間に一度は必ずやって来る土曜日ですが、ロゴス教会会堂で過ごした2019年6月8日土曜日の午後は夢空間La Musicaに特別の色合いを付加することとなりました。
音楽を聴く、楽しむ、ハッピーな時間を共有すること、に焦点を当てたコンサートを一貫して追い求めている夢空間La Musicaです。毎回今日が一番!と密かに自賛しておりますが、2019年6月8日土曜日はそのお手本となる回でした。
今回特筆すべきはプログラムの流れでした。Special Liveと銘打った意図がきれいに刻まれ、曲ごとを楽しむというより、曲と曲が作り出す物語を楽しむこととなりました。以下そのご案内です。
ジャズファンでなくとも知っている親しみやすいメロディー、A列車で行こうですが、華岡将生&遠藤征志デュオがお客様を快速運転(演奏)で、二人の音楽ハーレムへ軽快に、そして一気に運びました。
人間模様 – 男と女 – を描き分ける
と思ったら一転映画「いそしぎ」の主題歌the Shadow of Your Smile。この曲も親しみやすく、心の風景を感じさせるジャズのスタンダード曲です。日本では「いそしぎ」として親しまれています。
このいそしぎはチドリ目の鳥で漢字で書くと磯鷸。磯ではなく、湖沼や河原など淡水域で多く見られるそうです。
映画「ひまわり」の主題曲、「ひまわり」。とてつもなく大きなオムレツと画面いっぱいに咲くひまわりの強烈な印象が直球で心に突き刺さる映画でした。前日梅雨入りして、時折雨がぱらつく曇天がこの映画に込められた悲哀に寄り添うようでした。
アメリカ、ヨーロッパの映画を舞台にした男女の人間模様から日本の古典「源氏物語」に描かれる光源氏と様々な女性たちの人間模様の世界へ。その中でも生霊となって、葵上を殺したという事柄だけが突出して語られる「六条御息所」。源氏物語五十四帖各帖の作曲に取り組んでいる遠藤征志さんの作品です。チャーチオルガンの低音、重なるフルートの低音が六条御息所が抱く嫉妬心、復讐心そのものに聴こえました。
遠藤さんのお話
教会のパイプオルガンを演奏する許可を得るのは困難。どうしたら許可をいただけるか聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
1.音楽大学オルガン科で勉強
2.教会に入信し、訓練を積む
3.その上で審査に望み、合格する
・・・・やってられるか!・・・と心の中で叫んだ。従って、ロゴス教会の寛大なご厚意に感謝しかありません。
華岡将生さんアレンジの。besame mucho(ベサメムーチョ)」は今までにも何回か聴く機会がありました。今回、この暗く、重苦しく、あまりにも切ないアレンジは六条御息所ためだったのか、と納得。平安時代と昭和のメキシコ、平安時代の貴族ことばとスペイン語では天と地ほどあるはずの隔たりがどこにも見当たりませんでした。新しい発見でした。
人間模様の締めくくりはパリオペラ座に住むファントムの愛、深い愛。「オペラ座の怪人」を聴きたいというご希望と共にライブ申し込みをいただいていた曲でもあります。
「オペラ座の怪人」はドラマチックで素晴らしかった!!!以前見た映画の場面を思い出し、感動しました。と感想を寄せていただきました。
休憩時間のティータイム。たまたま集った人の間にも何とも言えない優しい空気が行き交います。一歩進んで、前半のライブについて一言、二言の会話が聞こえてくるとよいといつも思います。「ありがとう」の一言がいつにも増して素敵な響きを持ちます。
伝えたい思いを音楽に乗せて
華岡将生さんのフルート、「シリンクス」です。もともとは舞台の伴奏音楽としてドビュッシーが作曲したフルート1本だけで演奏される曲との紹介がありました。華岡将生さんの集中力に吸い寄せられた3分少々でした。
ベートーベン「悲愴」“抜粋”とプログラムには記載されていましたが、遠藤征志さんが全曲演奏する!と宣言された瞬間、音のない歓迎の嵐が沸き起こりました。言うまでもなく、ベートーベン3大ピアノソナタの一つです。曲に込められた情熱、光、独創性をいかんなく表現されていました。時間は20分弱。演奏を終えて立ち上がった遠藤征志さんは魂全てを使い切ったかのようで、もう帰りたい!衝動に一瞬襲われていたようです。
この「悲愴」を作曲した時期はベートーベン自身が難聴を自覚した時期と言われています。<私を月に連れて行って 星々の間で歌わせて>で始まる「Fly Me to the Moon」にベートーベンの心情と重なり合わせてしまいました。
ニューヨークで計算違いに出会う
緊張マックスのソロ演奏を終わって、二人がニューヨークのとある場所で待ち合わせをした時に起った、とんでもないけれど、聞く者は笑ってしまう出来事を語る遠藤征志さんと華岡将生さん。ライブは生身の人間に触れる楽しさもあります。
前半に演奏された「ひまわり」同様、戦争が絡んだ愛のカタチが描かれた映画「シェルブールの雨傘」こちらは哀しいようで、幸せなようで、ハッピーエンドと言ってもよいのではないでしょうか。華岡将生&遠藤征志トリオも軽快なリズムを刻みました。
映画「審判」に使われ、映画のヒットと共に曲も有名になった「アルビノーニのアダージョ」、チャーチオルガンゆったりした響きに合わせるように添えられるフルートの音色が絡み合い、バロック音楽の魅力に触れました。
気持ち沸き立つジャズ
ジャズを忘れそうになった時、ファンキー・ジャズと呼ばれる「THE PREACHER」が登場。立ち上がって、リズムを取って、行進したくなるような軽快なわかりやすいリズムに血の巡りが一気によくなったのではないでしょうか。
星のかけらから生まれた人間に思いを馳せる
このデュオが最後に必ず演奏する「オリオン」は遠藤征志さんが夜空のオリオン座を見つめた時、あの星の並びが音符に見えて、即作曲した名品です。沸き立った気持ちが静まり、宇宙空間に包まれ、人知の及ばない美しい世界に誘われます。
アンコール
「小象の行進」調子よく手拍子が鳴り響きました。
お客様の感想(抜粋)
・これからも是非LIVEに参加します
・掛け合い、追いかけっこ、遊びがあって「メロディは何処?」と思わせる妙が楽しい
・音のない空白も大切にされているようでよかったです
・お二人とも音からちゃんと言葉が聴こえてくるようでうよかったです
・超モダンなデザインの教会でのドビュッシー、ベートーベン、源氏物語・・・楽しい午後でした
・「悲愴」の後の「Fly Me to the Moon」ぼさ、心がほどけました。いい組み合わせでした。どちらも素敵でした
・チャーチオルガンがよかった
・何となく鬱々とした気分でいたこの1週間でしたが、それが不思議に消えていくように思いました