明治の幕開けと共に始まった西洋文化を取り入れる動きの中に音楽もあったこと。「音楽取調係」が西洋音楽と日本の音楽を折衷した音楽教育を目指したこと。日本の西洋音楽の礎を築いた山田耕筰の歌曲に捧げた情熱等につての話を始めに聞くことができ、コンサートへ向ける期待の視野が広がりました。
「呂律が回らない」の語源は二種類ある日本音階『呂(りょ)』『律(りつ』この二つがゴチャゴチャに混ざってしまった状態「呂律(りょりつ)が回らない」からきているという話にそうだったのか、思わぬお土産まで手にした気分になりました。
演奏曲目の内半分は初めて聴く歌曲でした。独特の「語り」を取り入れた北原白秋作詞『ちびツグミ』、作詞ビートたけし、作曲新垣隆「死んだ犬」はこの日が初お披露目でした。新垣氏ご自身が登場され、日本音階で作曲したこと、高度成長期を過ごした日本人それぞれの心にある穴を歌っているという紹介がありました。切ないまでのやさしさにビートたけし氏の人間力を改めて思いました。
雅楽、民謡、都々逸などを五線譜に載せて作曲されているこれらの歌曲に接してみると、日本人の芸術性の高さを誇りたい気分になりました。また、「ロマンティストの豚」「さびしいかしの木」などは『唱歌』として小学校でも取り入れて欲しいと思いました。取り入れられているのかな。
発見がたくさんあったコンサートでした。その中でも深尾須磨子作詞橋本國彦作曲『舞~六代目菊五郎の娘道成寺によせて』は圧巻でした。10分ほどに及ぶ歌と語りが変幻自在に織り込まれるその様子は一人オペラ歌舞伎と驚嘆しました。歌舞伎役者の衣裳の早変わりも舞台上に見える感覚になりました。
かつしかシンフォニーヒルズ入口にはモーツアルトの銅像が立ち、玄関を入ると大きな階段が視界いっぱいに広がり、モーツァルトホールロビーに加山又造氏の絵画「陽春」が掲げられていました。加山又造氏の絵画に出会えるとは思っていませんでしたので、これも僥倖。ホールは音響も素晴らしく、公会堂という言葉の響きから想像するホールとはかけ離れた設備に葛飾区民、青砥に住む人を大変うらやましく、また区民のためにこのような施設を作る葛飾区に敬意を表したくなりました。寅さんの生誕地はやはり素敵なところでした。
HPより抜粋
かつしかシンフォニーヒルズは、1318席のモーツァルトホールと298席のアイリスホールを中心に、ギャラリー(展示室)・カフェテリアなどの機能を持つ本館と、会議室・視聴覚室・レクリエーションルームなどを備えた別館が、ペデストリアンデッキで結ばれています。