オペラ『コシ ファン トゥッテ』

今年に入って2つめのオペラ鑑賞はモーツァルトの喜劇『コシ ファン トゥッテ(女はみなこうしたもの)』でした。1回目は新国立劇場で行われた『オテロ』でした。こちらはアルフォーコこの一員として夢空間La Musicaでも出演を重ねていただいているテノール、澤崎一了さん、今回は同じアルフォーコメンバーの高柳圭さん出演が出演されました。

【登場人物配役】*コメントは当日プログラムより一部引用

フィオルディリージ:砂田愛梨  フェラーラ出身の貴族姉妹

ドラベッラ:金子紗弓

デスピーナ(姉妹の女中、名前の由来は鋭くない棘):横山和美

フェランド(まじめな性格の士官、ドラベッラの恋人):高柳圭

グリエモ(情熱的な性格の士官、フィオルディリージの恋人):岩美陽大

ドン・アルフォンソ(老哲学者、士官2人の友人):立花敏弘

出演者一人一人の才能に魅せられました。アリア、重唱、聴き入りました。コミカルな演技に笑わされました。夢空間La Musicaで彼らとともに舞台を作ってみたいという見果てぬ夢まで見させていただきました。

 

 

【あらすじ】

若い士官二人が「自分の恋人が裏切ることは決してない」と主張するのに対し、「女はみな移り気なもんだ。君たちの恋人だって変わりはない」と揶揄する哲学者との言い争いがお話しの始まり。それぞれの恋人の純愛を試す賭けをすることになり、すったもんだの末、元の鞘に収まり、めでたしめでたし。

〈お互いの恋人が変装して入れ替わっていることに気づかない〉という設定は落語を思わせるお話しで、不倫というやっかいな事柄を題材にしているにもかかわらず、『粋』を感じてしまいました。

 

老哲学者以外は若い音楽家達で構成された舞台は楽団に至まで、この舞台のためだけに集まったとは思えない一体感を醸し出しており、何とも心地よい舞台でした。老哲学者ドン・アルフォンソを演じた立花敏弘氏の存在が多いに貢献しているのかと推察しました。舞台を心から楽しむ客席で度々湧き上がる笑い声も心地よいものでした。

キーボードが奏でるチェンバロの音色も貴族姉妹の心をなぞるようで、ゆかしく、危なっかしい雰囲気がよく表されて、時代背景を思わせるものでした。このオペラは二重唱から六重唱まで様々なアンサンブルで演唱される箇所が多く、そのハーモニーがどれも素晴らしく、重唱にゆったり身を任せる快感はなんとも表現の言葉が見つかりません。また高度な技量が必要と思わせるアリアにはソリスト各人の秘めた力を感じ取りました。彼らの今後の活躍を見守りたいと強く思いました。

シンプルな舞台装置と同じ舞台上で演奏する楽団という設定は、モーツァルトの時代に宮廷で披露されていた形式がそのまま移動してきたかと思う空間でした。このチームでまたオペラ公演を是非企画して欲しいです。