国立音楽大学大学院オペラ公演「ドン・ジョヴァンニ」

国立音楽大学大講堂で行われた国音楽大学大学院オペラ公演、創立90周年を記念した今年の演目はスペインの伝説上の放蕩貴族、ドン・ファンを題材にしたW.A.モーツァルト作曲、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」。2日間に渡って行われる公演は、かつてここで学んだ先輩男性陣と大学院2年在学中の女性陣の組合せで行われた。

自分のワクワクとほどよい緊張を観客と共有しようとするかのような男性陣の演奏と演技に、乗せられる快感に身をゆだねる。

音楽家としてのデビューを間近にした女性陣の初々しく、真摯な演奏と演技に、これから出会うであろう様々な試練にめげることなく、それを糧にして真珠の輝きを放つ音楽家に成長して欲しいと願う気持ちになるうれしさに身を沈める。

Cast

15日 16日
ドン・ジョヴァンニ 近藤 圭 村松 恒夫
レポレッロ 大川 博 大島 嘉仁
ドン・オッターヴィオ 高柳 圭 吉田 連
ドンナ・アンナ 愛樂 和子 藤原 千晶
ドンナ・エルヴィーラ 1幕 西村 知花子 内田 千陽
2幕 都森 冴耶
ツェルリーナ 浅田 眞理子 三浦 梓
マゼット 高田 智士 小山 晃平
騎士長 苅野 賢一 苅野 賢一

管弦楽:国立音楽大学オーケストラ

合唱:国立音楽大学合唱団

チェンバロ:相田久美子(15日) 田代ルリ(16日)

音楽家として成長し、聴く人に“暮らしの中の特別の時空”を提供するために積まなければならない研鑽は多い。舞台、コンサートの経験は彼ら、彼女らの器を大きくするし、器を磨く大事な機会であることは間違いがないと大学院オペラを鑑賞するたびに実感する。それは大学院卒業演奏で出会った音楽家の卵たちの軌跡を見ても確かなことと思う。夢空間La Musicaは演奏機会を一つでも多く提供することを心がけたい。

閑話休題

大学院オペラの注目点は出演者ばかりではない。手渡されるプログラムも趣がある。自分のうんちくに加えたい「作品解説」、かゆいところに手が届く「あらすじと聴きどころ」、出演者の思いをくみ取ることができる「出演者のコメント」を読むのも楽しい。プログラム以外にも関心を向けたのは日本語字幕。作品ドン・ジョヴァンニの魅力を引き出すために推敲に推敲を重ねたであろう字幕に脱帽。

設備の整った1290名収容の大講堂が埋まっている様子を見るのもチケットを買った一人として快感。3時間を越える公演は演劇としても素晴らしく、オペラを志す音楽家達の技量の広さと深さ、そこに向かって精進するひたむきなエネルギーに大いに癒された。若き音楽家の成長の場であると同時に、観客はオペラの醍醐味を享受する場でもあった。