桂右團治落語会@ヴィ・マエストロ

会場となるヴィ・マエストロの窓外は桜満開、朝からの花時雨もあがった土曜の夜、『マエストロDE落語第五回 桂右團治の会』を開催しました。落語は好きでも、その世界のことには疎く、会の度に勉強を重ねようと昨年3月19日に始めた会は今回で2年に入りりました。

 

 

 

 

落語を聴く個々人の楽しみにひと味加えたいという提案に師匠が応えてくださり、落語を聴く前に全員で「あっはっは体操」を行っています。お腹の底から大きな声を出すと初めて参加された方のちょっと緊張した気分を和らげます。常連さんは今日はもっとよい声を出そうともしかしたら密かに競っているかもしれません。

 

終演後の食事歓談の中で「今日は桂右團治師匠の落語を聞きに来たが、ここ出会った人との縁を大切にしたい」とおっしゃる方が何人かいらっしゃいました。“大人の遊び場交叉点”を目論む主催者としては嬉しいことばでした。

【今回の演目】

熊の皮

ある時女房に「おい」と呼ばれて「はい」と返事をしてしまったことが家庭内における上下関係逆転のきっかけだったと振り返る正直者だが、行儀作法はとんと疎い八百屋の甚兵衛さんと女房のやりとりは日常生活の鬱憤をあっはっはとはき出せます。お赤飯のお礼口上を教えられ、その口上を医者の前で四苦八苦で語る姿はまさしく落語の世界です。その甚兵衛さんが医者を前に「あんたを好きじゃない」と二、三度言い放つ場面があります。落語を聴いていると、使われる言葉の潔さや、やさしさに触れて、笑いと同時に気持ちが洗われます。そして、普段なかなか口にはできない言葉を甚兵衛さんのようにすぱっと言い切る場面に出会うと、自分が言い放ったような気になり、爽快な気分に満たされます。

抜け雀

小田原宿で夫婦だけで切り盛りしている小さな旅籠が舞台。どの宿も客引きしないぼろぼろの風体の男を「百両ほども内金を入れようか」と言う言葉に欣喜雀躍した亭主がこの男を客として引っ張り込むところから始まるこの落語は『熊の皮』とは違い、大笑いする噺ではない。亭主と客、女将と亭主のやりとりにくすりと笑ってしまう、お殿様が雀が描かれた衝立に提示した千両、籠が書き加えられた衝立に二千両という金額。一両が今の10万円と知って何となく笑みが浮かぶ、そんな噺。

ぼろぼろの風体の泊まり客の描写、気が良く、貧乏くじを引きがちでおっちょこちょいではあるが、墨をすりながら「ああいい匂い」という辺りに芸術になにがしかの思いがありそうな雰囲気を漂わす宿屋の亭主の描写など落語家の語りを楽しむ噺と思いました。親子の不器用だがまっすぐな情愛、師弟としての有り様が爽やかな空気を漂わせて噺が閉じられました。

【鉛筆画】

ヴィ・マエストロの壁には季節に合わせ、主にマスターの奥さま中神ふさ子さんの作品が掛けられています。現在は田村順正(たむらよしまさ)さんが描かれた多摩御陵、浅川周辺の風景画が掛けられています。4H鉛筆のみで描かれた細密画です。ヴィ・マエストロの薫り高いコーヒー、厳選されたワインなどを楽しみながら壁一面に清楚に並ぶこの鉛筆画を鑑賞されてはいかがでしょうか。5月6日まで鑑賞することができます。