「音楽×語り」が織りなす新しい日本昔ばなし

夢空間La Musicaコンサート第37回

開催日:2017年10月28日

場 所:日本基督教団ロゴス教会

出演者:

桂右團治(語り) 河口三千代(ソプラノ)

野畑愛(クラリネット) 渡辺美佳(ピアノ)

長尾知子(パーカッション)

 

 

 

近づいてくる台風、近くに居座る秋雨前線、という天気図を目の当たりにして、コンサート当日が晴天になることは望まないが、曇天、せめて小雨であってほしいという願いが通じて小雨模様となった10月28日、ユニット「まんまるず」旗揚げ公演を行いました。

昨年新大久保で行った音楽と語りで紡ぐ『日本昔ばなし』公演の経験を活かすべく、音楽と語りのバランス、より物語のイメージに沿う音楽の選択、パフォーマンスなどなど1年間試行錯誤を繰り返しました。今回は手作り定式幕、まんまるず家紋入り半纏(これも手作り)が加わりました。

昔ばなしと西洋音楽のマリアージュは大人も十分に楽しめる舞台となりました。

【桃太郎】

昔ばなし【桃太郎】は伊弉諾(イザナギ)が伊弉冉(イザナミ)を追って黄泉の国へ行き、追ってくるシコメ軍の鬼たちから逃げる際に桃三つを投げて助かったという『古事記』記述が原型といわれています。

桃太郎といえばすぐに思い浮かぶのは岡山県でしょう。そのほか香川県高松市の女木島が鬼ヶ島として語られるお話、桃太郎のモデルといわれる吉備津彦命が誕生した奈良県磯城郡田原本町、桃太郎神社がある愛知県犬山市など、全国各地に根づいています。

桃太郎話は最後の鬼退治は同じでもそこにいくまでのお話は様々です。今回夢空間La Musicaで取り上げたのは食べることと寝ること以外には興味のなかったぐうたらな桃太郎が鬼退治をするパターンです。ただし、芥川龍之介が書いた「桃太郎」は全く趣を異にしています。平和愛好者の鬼を襲う桃太郎と仲の悪い供の犬、猿、雉のお話になっています。

モーリス・ラベル作曲「ボレロ」に誘われて登場した桂右團治師匠の落語「桃太郎」で始まりました。“情報”などという言葉と無縁だった頃の子供と情報の宝庫“タブレット”が身近となった今の子供の対比が笑いを呼びます。また今の子供が語る「桃太郎話」に込められた《教育的意義》になるほど、なるほどと得心しました。

 

 

お供となる犬(長尾知子)は「ワンワン語」の歌「桃太郎さん」、猿(野畑愛)はラプソディー・イン・ブルーから始まるクラリネットの「桃太郎さん」、雉(河口三千代)は何とプッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』の中で歌われる「私のお父さん」で桃太郎さんの歌詞を歌い上げました。

 

 

 

 

 

 

ピアノ奏者であり、かつ音楽監督の渡辺美佳さん、時にはマラカスで見た目も楽しい動きのあるパフォーマンスを披露しました。

その他主な使用曲目

M.ラヴェル:ボレロ

B.スメタナ:モルダウ

L.v.ベートーベン:歓喜の歌

E.サティ:ジムノペティ

E.エルガー:威風堂々

 

 

【屁ひり女房】

山奥の小さな村に住む一家に器量よし、気立てよし、体も丈夫な三国一の嫁ごが来ました。ただ一つだけ困ったことはその嫁ごの「屁」の威力がとてつもないものだったのです。クラリネットで「かわいい屁」はマウスピース、「ちょっとすごいぞな屁」はマウスピースにリガチャー(樽)を装着、「巨大台風並みの屁」はバスクラリネットのマウスピースとリガチャー(樽)と吹き分ける野畑愛さんのパフォーマンスに思わず笑ってしまいます。

嫁ごの屁のせいで髪の毛がすっかり吹き飛んでしまったおっ母が歌う「アヴェ・マリア」(サンサーンス)は嫁ごを優しく包み込む心そのものです。

一旦は里に戻されることになり、亭主と無言で歩く山道は悲しい場面ではありますが、ここで演奏される「おもちゃの兵隊行進曲」が登場人物一人一人の素朴さ、まじめさ、明るい人柄をイメージさせます。

峠の茶屋で嫁ごの屁は上手に使えば有益であることがわかり、村に引き返した亭主と嫁ご。めでたし、めでたしで幕を閉じます。

亭主は嫁ごが遠慮せずに屁をすることができる「屁の家」を作ってやったそうです。「屁の家」が現在の「部屋」の語源だそうです。

 

その他おもな使用曲目

L.v.ベートーベン:悲愴第2楽章

M.ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

【アンコール】

深紅の上着、黒のパンツ姿の桂右團治師匠の指揮がリードする『ラデツキー行進曲』は会場の手拍子もにぎやかにロゴス教会会堂は浮き立つリズムに包まれました。

 

 

 

 

 

 

 

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